総務省は2026年10月9日、8月の家計調査の結果を公表しました。2人以上の世帯の消費支出は1世帯当たり31万975円で、物価の影響を除いた実質で前年同月比3.1%減でした。実質の減少は9カ月連続です。
結論:8月は給料の統計(毎月勤労統計)で実質賃金がプラスだった一方、家計の支出は減り続けています。ただし、季節的な動きを除いた前月比では0.1%増とほぼ横ばいでした。本記事では、家計調査の読み方、何にお金を使わなくなっているのか、「給料は増えたのに消費が減る」ように見える理由、そして株式市場や日銀にとっての意味を初心者向けに整理します。
家計調査とは?家庭が何にいくら使ったかを調べる統計
家計調査は、総務省統計局が全国の世帯を対象に、毎月の収入と支出を家計簿の形で記録してもらい、集計する統計です。食料、住居、光熱・水道、教育、娯楽など、家庭が何にいくら使ったかが分かります。個人消費(家計がモノやサービスを買うこと)は日本の経済の大きな部分を占めるため、景気を考えるうえで注目されます。
ニュースでよく使われるのは「2人以上の世帯」の消費支出です。ここでは2つの言葉を押さえておきましょう。
- 名目:実際に支払った金額そのものの変化です。
- 実質:物価の上昇分を差し引いた変化です。値上がりで支払額が増えても、買った量が減っていれば実質はマイナスになります。
8月の消費支出は?実質3.1%減で9カ月連続のマイナス
確認できた事実(総務省統計局「家計調査報告(2026年8月分)」、2026年10月9日公表):
| 項目(2人以上の世帯) | 2026年8月 |
|---|---|
| 消費支出(1世帯当たり) | 31万975円 |
| 前年同月比(名目) | −1.0% |
| 前年同月比(実質) | −3.1%(9カ月連続の実質減少) |
| 前月比(季節調整値・実質) | +0.1% |
実質の前年同月比は、2026年に入ってから1月−1.1%、2月−1.8%、3月−2.9%、4月−0.5%、5月−0.4%、6月−3.3%、7月−3.6%、8月−3.1%と推移しています(2025年12月も−2.6%)。支払った金額(名目)は1.0%減にとどまる一方、実質では3.1%減となっており、値上がりの影響で、買う量がより大きく減っていることがうかがえます。
なお、季節調整値(毎年決まった時期に起こる増減をならした数値)で前月と比べると0.1%増で、7月からはほぼ横ばいでした。
何に使わなくなった?教育・娯楽・食料・電気代などが減少
| 費目 | 金額 | 実質の前年同月比 |
|---|---|---|
| 食料 | 10万4,220円 | −1.4%(名目は+1.7%) |
| 住居 | 1万8,267円 | −5.8% |
| 光熱・水道 | 1万9,835円 | −5.2% |
| 家具・家事用品 | 1万3,880円 | −6.3% |
| 被服及び履物 | 7,754円 | −8.7% |
| 保健医療 | 1万5,699円 | −1.9% |
| 交通・通信 | 4万3,647円 | +0.2% |
| 教育 | 6,230円 | −12.3% |
| 教養娯楽 | 3万6,572円 | −4.3% |
出典:総務省統計局「家計調査報告(2026年8月分)」。10の費目のうち、増えたのは交通・通信だけでした。
- 食料:支払額(名目)は1.7%増えましたが、実質では1.4%減です。食品の値上がりで、同じ金額で買える量が減っている形です。
- 教育:私立大学の授業料などが減りました。
- 教養娯楽:国内のパック旅行費などが減りました。
- 光熱・水道:電気代が減少に寄与しました。
- 増えたもの:自動車の購入や、仕送り金、予備校などの補習教育は増加に寄与しました。
家計調査は、調査に協力する世帯の数が限られるため、自動車や授業料のように金額が大きく、毎月の支払いがばらつく項目で数字がぶれやすい特徴があります。1カ月の結果だけでなく、数カ月の流れで見ることが大切です。統計局が示す3カ月の移動平均(直近3カ月の平均)でも、8月は前年同月比−3.3%でした。
給料は増えたのに消費は減る?実質賃金との違い
厚生労働省の毎月勤労統計(8月速報)では、実質賃金は前年同月比1.5%増と8カ月連続のプラスでした。詳しくは実質賃金1.5%増で8カ月連続プラス|8月の毎月勤労統計、給料は物価に追いついた?で解説しています。では、なぜ家計の支出は減っているのでしょうか。
まず、2つの統計は調べている対象が違います。毎月勤労統計は事業所(会社)を対象に「働く人1人当たりの給料」を調べ、家計調査は世帯を対象に「家庭全体の収入と支出」を調べます。家計調査の2人以上の世帯には、年金で暮らす高齢の世帯も含まれます。
実際、家計調査で働く人がいる世帯(勤労者世帯)の8月の実収入は61万6,704円で、名目では1.3%増えましたが、実質では0.9%減でした。世帯主の定期収入は実質1.0%増えた一方、配偶者の収入は実質2.5%減っています。
また、収入のうち消費に回した割合を示す平均消費性向は64.5%で、前年同月の68.6%から4.1ポイント下がりました。手取り収入のうち、使わずに残した割合が増えたことになります。物価高の中で、家計が支出に慎重になっている可能性があります。
投資家にとっての意味は?内需株と日銀の判断材料
個人消費が弱いと、小売や外食、レジャーなど、国内のお客さんを相手にする企業(内需株)の売上に影響する可能性があります。一方、訪日客の売上や海外事業が伸びている企業もあり、企業ごとの違いは大きくなっています。
日銀は、賃金と物価がそろって上がり、消費が支えられるかを金融政策の判断で重視しています。植田総裁は10月6日の挨拶で、経済・物価の見通しが実現していけば政策金利を引き上げていく方針を説明していました(植田日銀総裁が10月6日に挨拶)。また、日銀のさくらレポートでも、物価高で必需品以外の支出を絞る高年層の声が紹介されています(さくらレポート10月は東北・四国が景気判断を引き上げ)。
- 消費が弱いと受け止められる場合:日銀が利上げを急がないとの見方が出る可能性があります。内需関連の企業の業績には慎重な見方が増えるかもしれません。
- 一時的と受け止められる場合:前月比はほぼ横ばいで、統計のぶれも大きいため、ほかの指標で消費の底堅さが確認されれば、影響は限られる可能性があります。
注意:家計調査だけで日銀の判断が決まるわけではありません。10月29〜30日の金融政策決定会合で日銀がどう判断するかは、現時点では分かりません。
次に確認すること|9月の消費と物価の動き
- 家計調査の7〜9月期平均:総務省は2026年11月10日に公表する予定です。
- 日銀の金融政策決定会合:2026年10月29日(木)・30日(金)。30日には展望レポートも公表される予定です。
- 企業物価指数(9月):日銀が10月13日(火)に公表する予定です。企業間の取引価格の動きは、今後の消費者物価にも影響します。
まとめ:8月の消費支出は実質3.1%減、物価高の中で家計は慎重
総務省の家計調査によると、8月の2人以上の世帯の消費支出は実質で前年同月比3.1%減となり、9カ月連続で減少しました。食料は支払額が増えても実質では減っており、教育や娯楽などの支出も減りました。実質賃金はプラスでも、世帯全体の実質収入は減っており、消費に回す割合も下がっています。個人消費の弱さが続くかどうかは、内需関連の企業の業績や日銀の判断にも関わるため、今後の統計で確認していく必要があります。
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載している数値は、2026年10月9日に総務省統計局が公表した資料に基づいています。