台湾の半導体受託製造(ファウンドリー)大手TSMCは、2026年10月8日に9月の月次売上高を発表しました。9月の売上高は約5,118.6億台湾ドルで、前月比0.6%減、前年同月比54.6%増でした。これで7〜9月(第3四半期)の3カ月分の売上がそろいました。
結論:7〜9月の売上高の合計は約1兆4,942億台湾ドルで、前年同期より約51%、前の四半期(4〜6月)より約18%増えました。会社が7月に示した第3四半期の売上見通しを、会社の前提の為替レートで台湾ドルに換算すると、合計はその上限を上回る計算です。ただし、正式な四半期の決算は10月15日に発表されます。本記事では、TSMCが米証券取引委員会(SEC)に提出した資料をもとに、数字の意味と注意点を初心者向けに整理します。
発表前に整理した月次売上高の見方はTSMC9月売上高は10月8日発表|AI需要と日本の半導体株への影響をどう見る?で解説しています。
TSMCの9月売上高は?5,118.6億台湾ドルで前年同月比54.6%増
確認できた事実(TSMCの月次売上高報告、SEC提出資料):
| 期間 | 売上高(連結) | 前月比 | 前年同月比 |
|---|---|---|---|
| 2026年7月 | 4,675.8億台湾ドル | +5.6% | +44.7% |
| 2026年8月 | 5,148.1億台湾ドル | +10.1% | +53.3% |
| 2026年9月 | 5,118.6億台湾ドル | −0.6% | +54.6% |
| 2026年1〜9月累計 | 3兆8,987.3億台湾ドル | ― | +41.1% |
※会社は百万台湾ドル単位で開示しており、本記事では億台湾ドルの小数第1位に四捨五入しています。前年同月比・累計の伸び率は会社の開示どおりです。
9月は8月よりわずかに減りましたが、8月に続いて5,000億台湾ドルを上回りました。月次の売上は出荷のタイミングで振れやすいため、1カ月の増減だけでなく、3カ月の合計や前年との比較で見るのが基本です。
7〜9月期の売上は見通しを上回った?会社の前提で換算すると上限超え
7月・8月・9月の3カ月を足すと、第3四半期の売上高は次のようになります(月次の開示から計算した試算です)。
| 期間 | 売上高(3カ月合計) | 比較 |
|---|---|---|
| 2026年7〜9月 | 約1兆4,942億台湾ドル | ― |
| 2026年4〜6月 | 約1兆2,704億台湾ドル | 7〜9月は約17.6%増 |
| 2025年7〜9月 | 約9,899億台湾ドル | 7〜9月は約50.9%増 |
会社の見通しとの比較(試算):TSMCは7月16日の第2四半期決算で、第3四半期の売上高を446億〜458億米ドルと見込みました。会社が利益率の見通しの前提にした1米ドル=32台湾ドルで換算すると、約1兆4,272億〜1兆4,656億台湾ドルです。実際の3カ月合計(約1兆4,942億台湾ドル)は、この上限を約2%上回ります。
注意点:見通しは米ドル建てです。実際の為替レートが前提の32台湾ドルと違えば、米ドル建ての売上高は変わります。たとえば台湾ドル高(1米ドルあたりの台湾ドルが少ない状態)なら、同じ台湾ドルの売上でも米ドル建ての金額は大きくなります。米ドル建ての正式な数字と、見通しとの比較は、10月15日の決算発表で確認する必要があります。
なぜ売上が伸びている?AI向け先端半導体と2ナノの立ち上がり
TSMCは、NVIDIAなどの半導体設計企業から注文を受けて、AI向けの最先端の半導体を製造しています。そのため、TSMCの売上は「AI向けの半導体がどれだけ作られているか」を早く知る手がかりとして注目されます。
7月の決算発表で、同社の最高財務責任者(CFO)は、第3四半期の事業は2ナノメートル技術の急速な立ち上がりを含む、先端技術への強い需要に支えられるとの見方を示していました。第2四半期の実績では、ウエハー売上に占める7ナノメートル以下の先端技術の割合は77%でした(2ナノが3%、3ナノが30%、5ナノが33%、7ナノが11%)。
「ナノメートル」は回路の細かさを表す世代の呼び名で、数字が小さいほど新しい技術です。新しい技術ほど1枚あたりの価格が高く、売上の伸びにつながりやすいとされます。AI投資の資金の流れとリスクはNVIDIAのAI投資は過熱している?で解説しています。
売上が増えても利益率は下がる見通し
TSMCは第3四半期の売上総利益率(粗利益率)を65〜67%、営業利益率を56〜58%と見込んでいます。第2四半期の実績は売上総利益率67.7%、営業利益率60.3%だったため、会社の見通しどおりなら利益率は下がります。新しい2ナノの工場は立ち上げの初期に費用がかさむことなどが、一般に利益率を押し下げる要因とされます。売上の伸びだけでなく、利益率がどうなったかも10月15日の決算の確認ポイントです。
日本の半導体関連株との関係は?「売上」と「設備投資」は別物
TSMCの売上が伸びると、日本の半導体関連企業にも追い風になるとみられることがあります。ただし、関係は直接的ではありません。
- 売上高:すでに作って出荷した半導体の結果です。
- 設備投資:これから工場や装置にいくら使うかの計画です。東京エレクトロンなどの製造装置メーカーや、ウエハー搬送装置のローツェなどの受注は、主に半導体メーカーの設備投資に左右されます。
実際に、10月8日に決算を発表したローツェは、生成AIやAI向けメモリへの投資拡大を背景に受注が大きく増えたと説明しています。詳しくはローツェ決算|上期は売上高21.5%増・営業利益42.4%増、通期予想を上方修正で解説しています。TSMCの設備投資計画に変更があるかどうかは、10月15日の決算説明会で注目される点の一つです。
上振れ・下振れの可能性|10月15日の決算で確認したいこと
以下は一般的な整理で、結果を予想するものではありません。
- 上振れの可能性:第4四半期(10〜12月)の売上見通しが強い場合や、設備投資計画が引き上げられる場合は、AI需要の強さが改めて意識される可能性があります。
- 下振れの可能性:利益率が見通しの下限に近い場合や、次の四半期の見通しが市場の期待に届かない場合は、売上が好調でも株価が下がることがあります。AI関連株にはすでに大きな期待が集まっており、期待との差が値動きを大きくしやすい点に注意が必要です。
次の日程:TSMCの第3四半期決算説明会は、2026年10月15日(木)14時(台湾時間)、日本時間では15時に開かれる予定です(同社の投資家向けサイトより)。同社は10月5日から14日まで、投資家との接触を控える「沈黙期間」に入っています。
まとめ:TSMCの7〜9月売上は前年同期比約51%増、正式な評価は10月15日の決算で
TSMCの9月の売上高は5,118.6億台湾ドルで、前年同月比54.6%増でした。7〜9月の合計は約1兆4,942億台湾ドルで、会社の前提の為替レートで換算すると、7月に示した売上見通しの上限を上回る計算です。一方で、会社は第3四半期の利益率が下がる見通しを示しており、米ドル建ての売上や利益率、次の見通しは10月15日の決算で確認する必要があります。
月次売上高はAI需要を早く知る手がかりになりますが、それだけで関連株の値動きが決まるわけではありません。本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載している数値は、2026年10月8日までにTSMCがSECに提出した資料に基づいています。