マイクロン決算分析|売上高は前年同期の約4.8倍、AIメモリ需要の中身とPERを見るときの注意点

米国の半導体メモリ大手、マイクロン・テクノロジー(Micron Technology、ティッカー:MU)が2026年9月30日に発表した2026年度第4四半期(6〜8月期、9月3日締め)の決算は、売上高が542億3,000万ドルと前年同期の約4.8倍に拡大しました。AI向けのデータセンター需要が業績を大きく押し上げた形です。翌10月1日の米国市場で、同社の株価は前日比3.0%高の1,097.39ドルで取引を終えました。

ただし、数字が大きいことと、これからの株価がどう動くかは別の問題です。本記事では、マイクロンがどのような会社で、何で稼いでいるのか、今回の決算で何が分かったのか、そして株価を見る際にどの指標に注意すべきかを、同社が米国証券取引委員会(SEC)に提出した決算資料をもとに整理します。

マイクロンはどんな会社?

マイクロンは、米国アイダホ州に本社を置く半導体メーカーで、主に「メモリ」と呼ばれる半導体を作っています。メモリには大きく分けて2種類あります。

  • DRAM(ディーラム):パソコンやサーバーが計算中のデータを一時的に置いておく作業台のような役割を持つメモリです。電源を切るとデータは消えます。
  • NAND(ナンド)型フラッシュメモリ:スマートフォンやSSDなどで、データを長く保存しておくためのメモリです。

近年特に注目されているのが、DRAMを積み重ねて高速にデータをやり取りできるようにした「HBM(高帯域幅メモリ)」です。AIの学習や推論に使われる高性能な半導体と組み合わせて使われるため、AI向けデータセンターの投資拡大とともに需要が伸びているとされます。メモリ市場は、韓国のサムスン電子やSKハイニックスなどと競合する、限られた企業による競争の激しい分野です。

何で稼いでいる?事業部門ごとの売上

マイクロンは、顧客の分野ごとに4つの事業部門に分けて売上を開示しています。2026年度第4四半期の内訳は次のとおりです。

事業部門 主な用途 第4四半期売上高 構成比
コア・データセンター 企業や政府のサーバー向け 180億0,200万ドル 約33%
クラウド・メモリ 大手クラウド事業者向け(HBMを含む) 162億8,300万ドル 約30%
モバイル・クライアント スマートフォン・パソコン向け 131億1,400万ドル 約24%
オートモーティブ・エンベデッド 自動車・産業機器向け 68億2,400万ドル 約13%

データセンター向けの2部門で売上の約6割強を占めています。スマートフォンやパソコンといった身近な製品向けよりも、AIやクラウドのための設備投資が業績を左右する構造になっていることが分かります。

2026年度第4四半期決算のポイント

決算資料で確認できる主な数字を整理します。GAAPは米国の会計基準に基づく数字、Non-GAAPは一時的な費用などを除いて会社が独自に調整した数字です。

項目 2025年度第4四半期 2026年度第3四半期 2026年度第4四半期
売上高 113億2,000万ドル 414億6,000万ドル 542億3,000万ドル
売上総利益率(GAAP) 44.7% 84.6% 86.8%
営業利益(GAAP) 36億5,400万ドル 333億1,800万ドル 437億5,100万ドル
研究開発費 10億4,700万ドル 13億1,600万ドル 19億1,300万ドル
マイクロンの四半期売上高。2025年度第4四半期113.2億ドル、2026年度第3四半期414.6億ドル、第4四半期542.3億ドル、2027年度第1四半期の会社見通し615億ドル±15億ドル
出典:Micron Technology Form 8-K Exhibit 99.1(2026年9月30日発表)。作成:ゼロから学ぶお金の教科書

確認できた事実:第4四半期の売上高は前の四半期から約31%増え、前年同期の約4.8倍になりました。純利益(GAAP)は377億ドル、1株当たり利益(EPS、希薄化後)は32.87ドルです。Non-GAAPのEPSは33.42ドルでした。売上総利益率は86.8%と、1年前の44.7%から大きく改善しています。売上総利益率とは、売上から製品を作るための直接の費用を引いた利益が、売上に占める割合です。

通期で見ると、2026年度の売上高は1,331億9,000万ドルで、2025年度の373億7,800万ドルの約3.6倍でした。純利益(GAAP)は849億7,000万ドル、EPSは74.33ドルです。

お金の流れも確認しておきましょう。第4四半期の営業活動によるキャッシュフローは439億7,000万ドル、設備投資(純額)は107億7,000万ドルでした。会社が示す調整後のフリーキャッシュフローは332億ドルです。四半期末の現金・市場性のある投資資産・使途制限付き現金の合計は734億8,000万ドル、短期・長期の有利子負債は合計51億7,900万ドルでした。

会社の見通し(ガイダンス)

マイクロンは次の2027年度第1四半期(9〜11月期)について、次のような見通しを示しました。

  • 売上高:615億ドル±15億ドル
  • 売上総利益率(Non-GAAP):約86.25%
  • EPS(Non-GAAP):38.15ドル±1.00ドル

見通しどおりなら、売上高はさらに前の四半期を上回る計算です。決算資料で経営陣は、AIの進化にとってメモリが重要な役割を担っているという見方を示しています。また、1株当たり0.15ドルの配当を10月29日に支払うことも発表しました。

解釈:市場では、AI向けメモリの需要が強く、供給が追いつかない状態が続いていることが、高い利益率の背景として意識されているとみられます。10月1日の株価上昇も、決算と見通しが受け止められた結果の一つと考えられますが、同じ日の半導体株全体の動きや金利の変化など、他の要因も重なっている可能性があります。

株価を見るときに確認したい指標

PER(株価収益率):景気循環株では「低いから割安」とは限らない

PERは、株価が1株当たり利益の何倍かを示す指標です。10月1日の終値1,097.39ドルを2026年度の通期EPS(GAAP)74.33ドルで割ると、約14.8倍になります。この数字だけを見ると、成長企業としては高くないように見えるかもしれません。

ただし、メモリは需要と供給のバランスで価格が大きく変わる「景気循環型」の業界として知られています。利益が非常に大きい時期にはPERが低く見え、利益が落ち込んだ時期にはPERが高く見えるという、見かけ上の逆転が起きやすい点に注意が必要です。PERは「今の利益がこの先も続くかどうか」とセットで考える指標です。

売上総利益率の推移

メモリの価格が上がると利益率が上がり、下がると利益率も下がりやすい傾向があります。86%台という現在の水準が続くかどうかは、需給の状態を映す重要な手がかりです。四半期ごとの推移を追うと、需給の変化をいち早く読み取りやすくなります。

設備投資と在庫

メモリ業界では、需要が強い時期に各社が生産能力を増やし、その後に供給が過剰になって価格が下がることが過去に繰り返されてきました。マイクロン自身の設備投資額に加え、競合他社の投資計画や、在庫(第4四半期末で103億7,200万ドル)の増減も確認したいポイントです。

株価の変動幅

マイクロンの株価は、過去52週間で約180ドルから1,255ドルまでの範囲で動いてきました。短期間でこれだけ大きく動いた銘柄は、良いニュースにも悪いニュースにも大きく反応しやすいと考えられます。値動きの大きさ自体がリスクの一つです。

リスクとして意識したい点

  • 需給の変化:競合を含めた生産能力の拡大や、AI向け投資のペースの変化によって、メモリ価格が下がる可能性があります。
  • 顧客の集中:データセンター向けの比率が高いため、大手クラウド事業者などの投資計画の変更が業績に影響しやすい構造です。
  • 地政学・規制:半導体は各国の輸出規制や通商政策の影響を受けやすい分野です。
  • 期待の高さ:市場の期待がすでに高い場合、好決算でも株価が下がることがあります。
  • 為替:日本から米国株に投資する場合、株価に加えて円相場の変動も損益に影響します。

同社は決算資料の中で、将来の見通しには不確実性があり、詳しいリスク要因はSECへの提出書類(年次報告書など)を参照するよう記載しています。

今後の確認ポイント

  • 2027年度第1四半期の実績が、ガイダンス(売上高615億ドル±15億ドル)の範囲に収まるか
  • 売上総利益率が86%台を維持するか、低下に転じるか
  • データセンター向け2部門の売上が引き続き伸びるか
  • 競合各社の決算や設備投資計画で、供給拡大の動きが強まっていないか
  • 大手クラウド事業者の設備投資計画に変化がないか

決算を読むときの基本的な流れは米国株の四半期決算の見方と活用法で、企業の稼ぐ力を見る考え方はファンダメンタルズ分析のポイントと活用法で解説しています。

まとめ:数字の大きさより「続くかどうか」を見る

マイクロンの2026年度第4四半期は、売上高・利益率ともに過去の水準を大きく上回り、次の四半期の見通しも増収を示しました。AI向けデータセンターの需要が業績の中心にあることが、事業部門の内訳からも確認できます。

一方で、メモリは需給によって利益が大きく変わる業界です。PERが低く見えることや、株価がすでに大きく上昇していることも含めて、「今の好調がどこまで続くか」を、利益率・設備投資・競合の動きから継続して確認することが大切です。

本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。株価や業績の数値は記載した時点のもので、将来の株価や業績を保証するものではありません。

データの出典

マイクロン決算分析、売上高は前年同期の約4.8倍と書かれたアイキャッチ画像
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