2026年9月末、米国の長期金利の代表である10年国債利回りが5%台に乗りました。米国財務省が公表する日次利回りでは、9月30日が5.29%、10月1日が5.24%です。報道によると、10月1日の取引時間中には一時5.34%前後まで上昇し、2002年以来の高い水準を付けました。日本でも10年国債利回りが3%を超え、日米の中央銀行がそろって9月に利上げを決めています。
「金利が上がると株が下がる」と単純に覚えている人も多いかもしれません。実際には、金利上昇の理由や、どの資産をどの通貨で持っているかによって影響は変わります。本記事では、確認できる数字と、市場の受け止め方、今後見ておきたいポイントを分けて、NISAで長期投資をしている人にも分かるように整理します。
今、日米の金利で何が起きているのか
まずは数字を確認しましょう。下の表は、米国財務省と日本の財務省が公表している10年国債の利回りです。どちらも各日の公式な日次データで、取引時間中のリアルタイム値ではありません。
| 基準日 | 米国10年債 | 日本10年国債 | 日米の差 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月30日 | 4.16% | 1.662% | 約2.50%ポイント |
| 2025年12月末 | 4.18% | 2.066% | 約2.11%ポイント |
| 2026年6月30日 | 4.44% | 2.690% | 約1.75%ポイント |
| 2026年9月30日 | 5.29% | 3.057% | 約2.23%ポイント |
| 2026年10月1日 | 5.24% | 3.092% | 約2.15%ポイント |
※日本の2025年12月末は、財務省データの最終営業日である12月30日の値です。

確認できた事実:米国10年債利回りは、6月30日の4.44%から9月30日の5.29%まで、3カ月で0.85%ポイント上昇しました。2年債も同じ期間に4.14%から4.88%へ上がっており、満期の短い金利と長い金利がそろって上昇しています。日本の10年国債利回りも、1年前の1.662%から3.092%へと大きく水準を切り上げました。
利回りとは、債券を買って満期まで持った場合に得られる年率の収益の目安です。債券の価格と利回りは反対に動くため、「利回りが上がった」ということは「すでに発行されている債券の価格が下がった」ことを意味します。
金利が上がっている3つの背景
金利の上昇には一つの原因だけがあるわけではありません。ここでは、公表資料で確認できる材料と、市場で意識されていると考えられる材料を分けて見ていきます。
1. 米国の中央銀行が利上げを再開
米連邦準備制度理事会(FRB)は9月16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利の誘導目標を0.25%ポイント引き上げ、3.75〜4.00%にしました。FOMCの声明では、インフレ率が依然として高いことが説明されています。政策金利が上がると、それに近い短い期間の金利が上がりやすくなり、長い期間の金利にも影響が広がることがあります。
2. 日本でも利上げとインフレが続く
日本銀行は9月18日の金融政策決定会合で、短期の政策金利を1.0%程度から1.25%程度に引き上げました(賛成7・反対2)。日銀の公表文では、原油高や円安、AI関連需要の拡大などを背景に、企業間の物価上昇圧力が続いていると説明しています。10月2日に総務省が公表した9月の東京都区部の消費者物価指数(中旬速報)は、生鮮食品を除く総合で前年同月比2.7%の上昇でした。
3. 物価と景気の先行きへの見方
解釈:長期金利は、将来の政策金利の予想や物価の見通しに加え、長い期間お金を貸すことへの上乗せ分(タームプレミアムと呼ばれます)でも動くと考えられています。原油など資源価格の高止まりや、景気の底堅さが意識されると、「インフレがすぐには落ち着かない」という見方から金利が上がりやすくなります。国債の発行量や財政への見方を材料として挙げる市場解説もあります。ただし、それぞれの要因がどれだけ金利を押し上げたかを、公表データから正確に分けることはできません。
金利上昇は投資先によって影響が違う
金利の上昇は、あらゆる資産に同じ方向の影響を与えるわけではありません。代表的な資産ごとに、一般的に意識されやすい点を整理します。
株式:成長株ほど金利を意識されやすい
株価は、企業が将来生み出すと期待される利益を、現在の価値に置き換えて評価されると説明されます。その置き換えに使う「割引率」は金利と関係するため、金利が上がると、遠い将来の利益への期待が大きい成長株の評価が重くなりやすいといわれます。一方で、金利上昇が景気の強さを反映している場合は、企業業績への期待が株価を支えることもあります。10月1日の米国市場では、取引時間中に金利が上昇した場面で株価が下げた後、金利の低下とともに持ち直しました。金利の水準だけでなく、変化の速さや理由も見られています。成長株の考え方は成長株投資の見極め方でも整理しています。
債券:これから買う人と、すでに持っている人で見え方が違う
金利が上がると、すでに持っている債券や債券型の投資信託の価格は下がりやすくなります。一方で、これから債券を買う人にとっては、より高い利回りで投資できる機会にもなります。どちらが良い悪いではなく、保有している期間と目的によって受け止め方が変わる点を押さえておきましょう。
REIT・高配当株:利回りの比較対象が変わる
不動産投資信託(REIT)や高配当株は、配当利回りの高さが魅力とされます。国債の利回りが上がると、「安全性の高い国債でもこれだけの利回りが得られる」という比較が働き、相対的な魅力が見直されることがあります。また、借入れの多い事業では金利負担の増加も意識されます。REITの仕組みはリート(REIT)投資のメリットと注意点で確認できます。
為替:日米の金利差に注目
為替相場は、国と国の金利差に影響を受けると説明されることが多い指標です。上の表のとおり、日米の10年債利回りの差は、1年前の約2.50%ポイントから10月1日の約2.15%ポイントへ縮小しています。ただし、為替は貿易の収支、資金の流れ、政策の見通しなど多くの要因で動くため、金利差だけで円相場の方向を判断することはできません。
NISAで長期投資をしている人は何を確認する?
オルカンやS&P500に連動する投資信託を積み立てている場合、金利上昇のニュースを見て慌てる必要があるかどうかは、自分の資金計画によって変わります。確認しておきたいのは次の3点です。
- 投資信託の中身:株式だけの商品か、債券も含むバランス型かで、金利上昇の影響の受け方は異なります。目論見書や月次レポートで資産の配分を確認しましょう。
- 為替の影響:為替ヘッジなしの海外資産は、外国の株価に加えて円相場の変動も受けます。米国の金利上昇が円安につながる局面もあれば、反対の局面もあります。
- お金を使う時期:数年以内に使う予定の資金を値動きの大きい資産に置いている場合は、金利の変動による価格のブレが生活設計に与える影響を考えておく必要があります。
長期の積立は、金利が高い時期も低い時期も含めて続けることを前提にした方法です。金利の見通しを当てて売買のタイミングを計ることは、専門家でも難しいとされます。為替の影響については為替リスクのヘッジ方法と実践例も参考になります。
今後確認したい数字
金利の動きを追うときは、次のような公表データや予定を押さえておくと、ニュースの意味をつかみやすくなります。
- 米国の雇用統計:9月分は10月2日8時30分(米東部時間)、日本時間21時30分に公表予定です。雇用の強さは利上げの見通しに影響する材料として注目されます。
- 米国の消費者物価指数(CPI):インフレが落ち着く方向かどうかを確認する代表的な指標です。
- 日本の全国消費者物価指数:東京都区部の速報に続いて公表される全国の数字で、日銀の判断材料の一つです。
- 日米の次回金融政策会合:声明文で、今後の利上げについての表現が変わるかどうかが注目点です。
- 2年債と10年債の利回りの差:短い金利と長い金利の差は、景気や政策への市場の見方を映すといわれます。
数字を見るときは、「予想と比べてどうだったか」と「実際の値がどうだったか」を混同しないことが大切です。市場は事前の予想をある程度織り込んで動くため、良い数字でも予想に届かなければ反応が逆になることがあります。
まとめ:金利は「水準」と「理由」をセットで見る
米国の10年債利回りは9月末に5%台へ上がり、日本の10年国債利回りも3%を超えました。日米の中央銀行がそろって利上げを決め、物価の上昇が続いていることが背景として確認できます。ただし、金利上昇がそれぞれの資産に与える影響は一様ではなく、株式・債券・REIT・為替で見え方が異なります。
長期投資では、金利の動きに合わせて売買を繰り返すよりも、自分が持っている商品の中身と、お金を使う時期を確認しておくことが判断の土台になります。次に金利のニュースを見るときは、「どのくらい上がったか」に加えて「なぜ上がったのか」「予想と比べてどうか」を確認してみてください。
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。掲載している数値は記載した基準日時点のもので、将来の金利や運用成果を保証するものではありません。
データの出典
- 米国債利回り:米国財務省・Daily Treasury Par Yield Curve Rates(2026年10月2日取得)。
- 日本国債利回り:財務省・国債金利情報(2026年10月2日取得)。
- FRBの政策金利:FOMC声明(2026年9月16日)。
- 日銀の政策金利:金融市場調節方針の変更について(2026年9月18日)。
- 東京都区部の消費者物価指数:総務省統計局(2026年10月2日公表)。
- 10月1日の取引時間中の利回り:米国の市場報道(Yahoo Finance等)による。