証券会社で口座を開くときに迷いやすいのが、特定口座の「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の選択です。国税庁によると、源泉徴収ありを選ぶと、株などを売って出た利益について証券会社が税金を差し引き、確定申告をしなくて済むようにできます。
結論:手間を減らしたい人には「源泉徴収あり」が選ばれることが多い一方、ほかの口座の損失と相殺したい場合や、損失を翌年以降に繰り越したい場合は、源泉徴収ありでも確定申告が必要です。また、選択は1年単位で、その年の最初の売却のあとは変更できません。本記事では、国税庁の説明をもとに、2つの違いと選び方を初心者向けに整理します。
特定口座とは?年間の損益を証券会社が計算してくれる口座
特定口座とは、証券会社などに開く口座の一つで、その口座の中で株や投資信託などを売ったときの利益や損失を、証券会社が計算してくれる仕組みです。国税庁によると、1つの証券会社につき1口座に限られます。
証券会社からは、1年間の取引をまとめた「特定口座年間取引報告書」が送られてくるため、確定申告をする場合も簡単に済ませられます。一方、自分で年間の損益を計算する必要がある口座を「一般口座」といいます。
なお、NISA口座で得た利益は非課税のため、特定口座の税金の計算とは別に扱われます。NISAの枠の使い方は新NISAの「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の違いと使い分け方で解説しています。
「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の違い
| 項目 | 源泉徴収あり | 源泉徴収なし(簡易申告口座) |
|---|---|---|
| 税金の支払い | 売却のたびに証券会社が差し引く | 自分で確定申告して納める |
| 確定申告 | しなくてもよい(口座ごとに選べる) | 自分で行う(年間取引報告書で簡単に申告できる) |
| 年間取引報告書 | 届く | 届く(申告に使える) |
出典:国税庁「No.1476 特定口座制度」。
確認できた事実(国税庁):源泉徴収を選んだ特定口座(源泉徴収口座)では、上場株式等を売るたびに、利益に相当する金額に15.315%(ほかに住民税5%)の税率をかけた所得税・復興特別所得税が差し引かれます。合計は20.315%です。
配当金も源泉徴収ありの口座で受け取れる
源泉徴収ありの口座では、届け出をすると上場株式等の配当金をその口座で受け取れます。そうすると、同じ口座の中で出た売却損と配当金が自動的に相殺され、払いすぎた税金が調整されます。配当金の税金については投資で税金がかかるケースと節税方法|完全ガイドも参考にしてください。
源泉徴収ありでも確定申告が必要になるケース
国税庁は、次のような場合には確定申告が必要だとしています。
- ほかの口座との相殺:源泉徴収口座の利益と、別の証券会社の口座の損失を相殺したい場合。
- 損失の繰越控除:売却で出た損失を翌年以降の利益と相殺するため、翌年以降に繰り越したい場合。繰越控除とは、その年に使いきれなかった損失を翌年以降の利益から差し引ける仕組みのことです。
また、源泉徴収口座で出た売却損を申告する場合は、同じ口座で受け取った配当金なども一緒に申告する必要があります。
選択はいつまで?年の途中では変えられない
国税庁によると、源泉徴収ありを選ぶ場合は、その年の最初の売却のときまでに「特定口座源泉徴収選択届出書」を証券会社に出す必要があります。選択は1年単位のため、年の途中で源泉徴収なしに変えることはできません。
変更したい場合は、翌年の最初の売却より前に手続きを済ませましょう。具体的な手続きの方法は、利用している証券会社の案内で確認してください。
どちらを選ぶ?考え方のポイント
- 手間を減らしたい:源泉徴収ありなら、売却のたびに税金が差し引かれ、確定申告をしなくて済ませられます。
- 複数の証券会社を使っている:口座どうしで損益を相殺したい場合は、どちらを選んでも確定申告が必要になります。
- 自分の状況で判断:給与以外の所得の状況や家族の扶養などによって、有利な方法は変わる可能性があります。迷う場合は税務署や税理士に相談しましょう。
注意点とリスク
- 税金と投資の成果は別:口座の選び方で税金の手続きは変わりますが、株価の値下がりによる損失を防げるわけではありません。
- 口座を分けると管理が増える:証券会社ごとに口座があると、損益の全体像をつかみにくくなります。年に一度は全体の損益を確認しましょう。
- 制度の変更:税制は改正されることがあります。最新の内容は国税庁のページで確認してください。
まとめ:源泉徴収ありは手間が少なく、相殺や繰越には確定申告が必要
特定口座は、証券会社が年間の損益を計算してくれる口座です。「源泉徴収あり」を選ぶと、売却のたびに20.315%の税金が差し引かれ、確定申告をしなくて済ませられます。ただし、ほかの口座の損失と相殺したい場合や、損失を繰り越したい場合は確定申告が必要です。選択はその年の最初の売却までに行い、年の途中では変えられない点に注意しましょう。
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載している内容は、国税庁の「令和8年4月1日現在法令等」に基づく説明です。個別の税務の判断は、税務署や税理士にご確認ください。