日銀の総資産625兆円、1年で70.2兆円減|何が減った?国債・ETFと金融正常化を初心者向けに解説

日本銀行(日銀)が2026年10月7日に公表した「営業毎旬報告」によると、9月30日時点の日銀の総資産は625.0兆円でした。1年前の2025年9月末(695.2兆円)と比べて70.2兆円減り、減少率は10.1%です。

結論:減少の大部分は、日銀が持つ国債の減少(52.7兆円)と、金融機関への貸付金の減少(15.4兆円)によるものです。日銀は、持っている国債が満期を迎えて返ってくる一方で、新しく買う国債の額を少しずつ減らしています。そのため、「日銀が70兆円分を市場で売った」わけではありません。本記事では、日銀のバランスシートとは何か、何が減ったのか、金融政策の正常化とどう関係するのかを、初心者向けに整理します。

日銀のバランスシートとは?「資産」と「負債」の基本

バランスシート(貸借対照表)とは、ある時点で「何を持っているか(資産)」と「そのお金をどう調達しているか(負債・純資産)」を並べた表です。資産の合計と、負債・純資産の合計は必ず同じ額になります。

日銀の場合、主な資産は国債(国が借金をするときに発行する債券)や、金融機関への貸付金です。主な負債は、私たちが使うお札(発行銀行券)と、銀行などが日銀に預けている当座預金です。日銀が国債を買うと、その代金は売り手の銀行の当座預金に振り込まれるため、資産と負債が同時に増えます。

日銀は、この状況を10日ごとに「営業毎旬報告」として公表しています。

なぜ投資家は日銀の総資産を見るのか

日銀は2013年から、国債などを大量に買い入れて世の中に出回るお金を増やす「量的・質的金融緩和」を進めてきました。その結果、総資産は大きく膨らみました。

総資産が減っていくことは、そうした大規模な金融緩和を少しずつ元に戻す動き(金融政策の正常化)の一部と受け止められています。日銀が国債を買う量が減れば、国債の買い手が減るため、長期金利(10年国債の利回りなど、長い期間の金利)が上がりやすくなる面があります。金利の動きは、住宅ローン、銀行の収益、株式や為替などにも影響するため、投資家が注目しています。

日銀の総資産は625.0兆円|1年で70.2兆円減少

確認できた事実(日銀「営業毎旬報告」9月30日現在):

主な項目 2026年9月末 2025年9月末 前年差
総資産 625.0兆円 695.2兆円 70.2兆円減(10.1%減)
国債 504.0兆円 556.8兆円 52.7兆円減(9.5%減)
貸付金 68.4兆円 83.8兆円 15.4兆円減(18.4%減)
ETF(金銭の信託) 37.0兆円 37.2兆円 0.2兆円減
社債 1.1兆円 3.5兆円 2.4兆円減
当座預金(負債) 416.6兆円 502.1兆円 85.5兆円減(17.0%減)

※金額は日銀が公表した千円単位の計数を兆円単位に四捨五入しています。そのため、表の金額どうしの差と前年差が一致しない場合があります。国債・貸付金・当座預金の前年差と減少率は日銀の資料の記載、それ以外の前年差は千円単位の計数から計算しました。

日銀の資産の主な項目の前年差。国債マイナス52.7兆円、貸付金マイナス15.4兆円、社債マイナス2.4兆円、コマーシャル・ペーパー等マイナス0.4兆円、ETFマイナス0.2兆円、外国為替プラス1.0兆円
出典:日本銀行「営業毎旬報告」(2026年・2025年9月30日現在)。作成:ゼロから学ぶお金の教科書

このほか、コマーシャル・ペーパー等(企業が短い期間のお金を借りるために発行する証券)は、前年9月末の約0.4兆円から残高がなくなりました。一方、外国為替(外国の中央銀行への預け金や外国債など)は約1.0兆円増えています。

総資産のうち国債は約8割を占めています。総資産の減り方は、国債がどれだけ減るかに大きく左右されます。

国債が52.7兆円減った理由|売却ではなく「買う額を減らした」

日銀の資料は、国債が減った理由を「長期国債の買入減額により、前年比減少」と説明しています。

国債には満期があり、満期が来ると国から額面のお金が返ってきます(償還)。日銀が持つ国債が満期を迎えるたびに、日銀は新しい国債を買って保有額を保つこともできます。しかし現在は、満期で返ってくる額よりも新しく買う額を少なくしているため、保有額が少しずつ減っています。

確認できた事実(2026年6月16日の日銀の決定):日銀は、月々の長期国債の買入れ予定額を、2027年1〜3月までは原則として四半期ごとに2,000億円程度ずつ減らし、2027年4月以降は月2兆円程度の買入れを続けると決めています。予定額は、2026年10〜12月が月2.3兆円程度、2027年1〜3月が月2.1兆円程度です。日銀は、国債の保有残高が2027年3月末に480兆円程度になるという試算も示しています(月2兆円程度の買入れを続けた場合の試算、額面ベース)。

また、長期金利が急に上がる場合には、予定額にかかわらず買入れを増やすなど、機動的に対応するとしています。

貸付金・ETF・REITはどう変わった?

貸付金:15.4兆円減

日銀の資料は、貸付金が減った理由を「『貸出支援基金』による貸付けの減少等」と説明しています。貸出支援基金とは、金融機関が企業や個人への貸出しを増やすのを後押しするため、日銀が低い金利で資金を貸す仕組みです。この仕組みによる貸付けの残高が減っていることが、貸付金の減少につながっています。

ETF:簿価で約0.2兆円減

ETF(上場投資信託)とは、株価指数などに連動するように運用され、株式と同じように取引所で売買できる投資信託です。日銀はかつて、株式市場を支える目的でETFを買い入れてきました。営業毎旬報告の「金銭の信託(信託財産指数連動型上場投資信託)」は、日銀が買ったときの価格(簿価)で計上されています。

日銀は2025年9月の金融政策決定会合で、保有するETFを簿価で年間3,300億円程度(時価で6,200億円程度)のペースで市場で売却する方針を決めています。このペースは、市場全体の売買代金の0.05%程度にあたると日銀は説明しています。9月末のETFの計上額は37.0兆円で、1年前より約0.2兆円少なくなっています。

REIT:わずかに減少

REIT(不動産投資信託)とは、投資家から集めたお金でオフィスビルや商業施設などに投資し、賃料収入などを分配する商品です。日銀はJ-REITについても簿価で年間50億円程度のペースで売却する方針で、9月末の計上額は約6,506億円(前年9月末は約6,550億円)でした。REITの仕組みはリート(REIT)投資のメリットと注意点で解説しています。

当座預金は85.5兆円減|負債側の変化

銀行などが日銀に預けている当座預金は416.6兆円で、1年前より85.5兆円減りました。日銀の資料は、その理由を「長期国債の買入減額や『貸出支援基金』による貸付けの減少等」と説明しています。日銀が国債の買入れや貸付けを減らすと、そのぶん銀行に渡るお金が減るため、当座預金も減ります。

一方、「売現先勘定」は16.8兆円増えました。日銀の資料によると、政府に対して国債を売り、後で買い戻す取引(国債売現先)の残高が増えたためです。総資産の変化を見るときは、資産側だけでなく、負債側の動きもあわせて確認すると全体像がつかみやすくなります。

「量的引き締め(QT)」と呼ぶときの注意点

QT(Quantitative Tightening、量的引き締め)とは、中央銀行が保有資産を減らして、世の中に出回るお金を減らしていくことを指す言葉です。日銀の国債保有の減少も、報道などではQTと呼ばれることがあります。

ただし、日銀自身は、今回の動きを「長期国債の買入れの減額」として説明しています。日銀の国債の減少は、満期を迎えた国債の償還と、新しく買う額の減額によるもので、国債を市場で売っているわけではありません。米国の中央銀行(FRB)が進めてきたQTも、保有する国債の満期償還を中心とした仕組みでしたが、日米の制度や規模、進め方は異なるため、同じものとして単純に比べることはできません。

投資家への一般的な影響

  • 長期金利:日銀の国債の買入れが減ると、国債の買い手が減るため、長期金利が上がりやすくなる面があります。ただし、金利は物価や景気、海外の金利など多くの要因で決まります。
  • 銀行株:金利が上がると、貸出金利と預金金利の差(利ざや)が広がりやすく、銀行の収益にとってプラスと見られることがあります。
  • REIT・不動産:金利が上がると借入れのコストが増えるため、REITの価格には逆風になりやすいとされます。
  • 株式全体:日銀のETF売却のペースは市場全体の売買代金に比べて小さいと日銀は説明しています。ただし、市場の受け止め方によって値動きが変わる可能性はあります。

米国の長期金利の動きは米10年債利回りが5%台に|日米の金利上昇の背景で、日銀の利上げ方針は植田日銀総裁が10月6日に挨拶で整理しています。ETFの基本はETFとは?メリット・デメリットを徹底解説をご覧ください。

次に確認したい日程と数字

  • 営業毎旬報告:10月10日現在、10月20日現在など、10日ごとの公表
  • 10月29〜30日:日銀の金融政策決定会合と「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」
  • 国債の買入れ予定額:10〜12月は月2.3兆円程度、2027年1〜3月は月2.1兆円程度の予定

まとめ:日銀の総資産の減少は「売却」ではなく「買入れの減額」が中心

日銀の総資産は2026年9月末に625.0兆円となり、1年前より70.2兆円(10.1%)減りました。減少の中心は国債(52.7兆円減)と貸付金(15.4兆円減)で、国債の減少は、満期を迎えた国債の償還に対して新しく買う額を減らしていることによるものです。ETFとREITは、2025年9月に決めた方針に沿ってゆっくり売却が進められています。

日銀のバランスシートの縮小は、大規模な金融緩和からの正常化を示す数字の一つです。長期金利や銀行株、REITなどへの影響は、日銀の利上げ方針や海外の金利とあわせて考えることが大切です。本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載している数値は2026年10月7日に日銀が公表した営業毎旬報告(9月30日現在)などに基づいています。

参考資料

日銀の総資産625.0兆円、1年でマイナス70.2兆円(マイナス10.1%)。2025年9月末695.2兆円と2026年9月末625.0兆円の比較バーのアイキャッチ画像
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