景気動向指数は、生産や雇用など景気に敏感な指標をまとめて、景気の現状と先行きをつかむために内閣府経済社会総合研究所が毎月公表している統計です。ニュースで「景気動向指数の基調判断は改善」と報じられるのは、このうちCI一致指数の動きを機械的な基準に当てはめた結果です。
結論:直近の2026年8月分(10月26日の改訂値)は、CI一致指数が118.8(2020年=100)で前月から1.8ポイント低下しましたが、基調判断は「改善を示している」で据え置かれました。次の9月分速報は11月9日(月)に公表される予定です。この記事では、CIとDIの違い、基調判断の決まり方、9月分で見るポイントを公式資料をもとに整理します。
景気動向指数とは?CIとDIの違い
内閣府の「景気動向指数の利用の手引」によると、景気動向指数にはコンポジット・インデックス(CI)とディフュージョン・インデックス(DI)があります。CIは指標の動きを合成して景気変動の大きさやテンポ(量感)を、DIは改善している指標の割合から景気の波及の度合いを測ります。2008年4月分以降はCI中心の公表に移り、DIは参考指標として公表が続いています。
CIとDIには、それぞれ先行指数・一致指数・遅行指数の3つがあります。採用している指標は共通で、先行指数11、一致指数10、遅行指数9の合計30系列です。
| 指数 | 景気との関係 | 主な使い方 |
|---|---|---|
| 先行指数(11系列) | 一致指数に数か月先行 | 景気の動きの予測 |
| 一致指数(10系列) | 景気とほぼ一致して動く | 景気の現状把握 |
| 遅行指数(9系列) | 一致指数に数か月から半年程度遅れる | 事後的な確認 |
手引では、CI一致指数が上昇しているときは景気の拡張局面、低下しているときは後退局面とされています。ただし、景気動向指数は選ばれた指標の動きを統合したもので、すべての経済指標を総合的に勘案したものではない点にも注意が必要です。
2026年8月分の結果|一致指数は118.8、前月差1.8ポイント低下
10月7日に公表された8月分速報と、10月26日の改訂値は次のとおりです(CI、2020年=100)。速報は公表日の3営業日前(10月2日)までに公表された値で計算され、その後に出た数値を反映したものが改訂値です。
| 8月分 | 速報(10月7日) | 改訂(10月26日) |
|---|---|---|
| 先行指数 | 118.0(前月差+0.4) | 118.0(前月差+0.4) |
| 一致指数 | 118.7(前月差−1.9) | 118.8(前月差−1.8) |
| 遅行指数 | 112.1(前月差−0.9) | 112.4(前月差−0.5) |
一致指数の前月差を3月から並べると、下の図のようになります。7月までは上昇か横ばいが続き、8月は6か月ぶりの下降でした。

8月に一致指数を押し下げた指標
速報の概要では、「鉱工業用生産財出荷指数」や「耐久消費財出荷指数」などのマイナス寄与が下降の要因に挙げられています。速報時点の寄与度は、鉱工業用生産財出荷指数が−0.64、耐久消費財出荷指数が−0.44、輸出数量指数が−0.35、生産指数(鉱工業)が−0.32でした。生産と出荷、輸出の落ち込みが中心だったことが分かります。
なぜ下がったのに「改善」のまま?基調判断の決まり方
基調判断は、担当者の印象で決めるものではありません。内閣府の「CIによる景気の基調判断の基準」では、当月の前月差は一時的な要因で安定しないため、3か月後方移動平均と7か月後方移動平均の前月差を中心に、当月の変化の方向も踏まえて判断するとしています。
| 基調判断 | 主な基準 |
|---|---|
| 改善 | 原則3か月以上連続で3か月後方移動平均が上昇し、当月の前月差がプラス |
| 足踏み | 3か月後方移動平均の前月差がマイナスに変わり、一定以上下がり、当月の前月差がマイナス |
| 局面変化 | 7か月後方移動平均の前月差の符号が変わり、一定以上動いた(上方・下方) |
| 悪化 | 原則3か月以上連続で3か月後方移動平均が下降し、当月の前月差がマイナス |
| 下げ止まり | 3か月後方移動平均の前月差がプラスに変わり、一定以上上がり、当月の前月差がプラス |
8月は当月の前月差がマイナスだったため「改善」の条件には当てはまりません。一方で、3か月後方移動平均は速報時点で8か月連続の上昇(改訂値では前月差0.16ポイント上昇)で、「足踏み」などほかの判断にも当てはまりませんでした。基準では、どれにも該当しない場合は前月の判断を引き継ぐため、「改善を示している」が据え置かれたという流れです。
9月分速報は11月9日(月)|見るポイント
8月分の改訂資料には、9月分速報の公表は11月9日(月)の予定と記載されています。9月分で確認したいのは次の3点です。
- 当月の前月差の符号:プラスに戻れば「改善」の条件を満たしやすくなります。2か月続けてマイナスになると、移動平均の動き次第で判断が変わる可能性があります。
- 3か月後方移動平均:上昇が続くか、マイナスに転じるかが「足踏み」との分かれ目です。
- 先行指数:8月は前月差0.4ポイントの上昇でした。景気の先行きを見るうえで、9月も上昇が続くかを確認します。
景気全体の動きは、11月16日(月)に公表予定の7〜9月期GDP速報の記事とあわせて見ると立体的になります。一致指数の採用系列には有効求人倍率(除学卒)も含まれており、雇用面は9月の失業率・有効求人倍率の記事で確認できます。
投資家はどう使う?株価との向き合い方
景気動向指数は月次の統計で、公表までに1か月以上の時間差があります。株価は企業業績や金利、海外の動きなど多くの要因で動くため、指数の結果だけで相場の方向を決めつけるのではなく、景気の流れを確認する材料として使うのが現実的です。
例えば、街角の景況感を聞き取る景気ウォッチャー調査の記事や、企業の業況判断を集計した日銀短観の記事と組み合わせると、数字の背景が読み取りやすくなります。
よくある疑問
Q. CIとDIはどちらを見ればよいですか?
A. 景気の強さや勢いを見るならCIです。内閣府も2008年4月分以降はCI中心で公表しています。DIは、改善している指標がどれだけ広がっているか(波及度)を見る参考指標です。
Q. 景気後退かどうかは、景気動向指数で決まるのですか?
A. 毎月の基調判断は景気の現状を示す目安です。景気の山や谷といった転換点の判定には、手引によるとヒストリカルDIが使われます。
Q. 速報と改訂で数字が違うのはなぜですか?
A. 速報は公表日の3営業日前までに出ていた値で計算し、その後に公表された指標の値を反映して改訂されるためです。8月分の一致指数は速報118.7から改訂118.8になりました。
まとめ:基調判断は移動平均と当月の符号で決まる
景気動向指数は、30系列の指標をまとめたCIとDIで景気をとらえる統計です。2026年8月分の一致指数は118.8で前月差1.8ポイントの低下でしたが、3か月後方移動平均の上昇が続き、基調判断は「改善を示している」で据え置かれました。11月9日(月)の9月分速報では、当月の前月差がプラスに戻るか、移動平均の上昇が続くかを確認しましょう。
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。統計の数値は内閣府経済社会総合研究所の公表資料(2026年11月3日時点)に基づいています。