年金額は毎年4月分から見直され、その計算に使われるのが「マクロ経済スライド」です。令和8年度(2026年度)は、国民年金(基礎年金)でマイナス0.2%、厚生年金(報酬比例部分)でマイナス0.1%の調整が行われ、年金額はそれぞれ1.9%・2.0%の引上げになりました。
結論:マクロ経済スライドは、公的年金の加入者数の変動と平均余命の伸びをもとに「スライド調整率」を決め、賃金と物価の変動がプラスのときに、その分を年金額の改定率から差し引く仕組みです。令和8年度は、名目手取り賃金変動率2.1%からスライド調整率を差し引き、国民年金は1.9%、厚生年金は2.0%の引上げとなりました。国民年金の満額は月70,608円です。この記事では、厚生労働省と日本年金機構の資料をもとに、計算の流れを整理します。
マクロ経済スライドとは|年金額の伸びを調整する仕組み
厚生労働省の報道発表資料では、マクロ経済スライドは「公的年金被保険者数の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率を設定し、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するもの」と説明されています。平成16年の年金制度改正で導入されました。
年金は、働く世代が納める保険料などで支えられています。支え手の人数の変化や、年金を受け取る期間の長さを年金額の改定に反映させることで、将来世代の給付水準を確保することにつながる、と厚生労働省は説明しています。
令和8年度のスライド調整率は−0.2%
令和8年度のスライド調整率は、次の2つの合計です。
| 要素 | 値 | 使う期間 |
|---|---|---|
| 公的年金被保険者総数の変動率 | +0.1% | 令和4〜6年度の平均 |
| 平均余命の伸び率 | −0.3% | 定率 |
| スライド調整率(合計) | −0.2% | 令和8年度 |
なお、厚生年金(報酬比例部分)の調整率は、令和7年の年金制度改正により−0.1%となっています。
令和8年度の年金額はどう決まった?3つのステップ
令和8年度の年金額の改定は、次の順番で決まりました。

- 物価と賃金をくらべる:令和7年の物価変動率は3.2%、名目手取り賃金変動率は2.1%でした。物価の伸びが賃金の伸びを上回る場合は、現役世代の負担能力に応じた給付とするため、名目手取り賃金変動率を使うことが法律で決まっています。
- 名目手取り賃金変動率を計算する:実質賃金変動率(令和4〜6年度の平均)−1.1%+物価変動率3.2%+可処分所得割合変化率0.0%=2.1%です。
- スライド調整率を差し引く:国民年金は2.1%−0.2%=1.9%、厚生年金は2.1%−0.1%=2.0%の引上げになりました。
日本年金機構の年金Q&Aでも、令和8年4月分からの年金額は、原則として国民年金(基礎年金)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の引上げと案内されています。
厚生年金の調整率が小さい理由
令和7年の年金制度改正で、厚生年金(報酬比例部分)のマクロ経済スライド調整は、次期財政検証の翌年度(令和12年度を予定)まで続けることになりました。その間、厚生年金を受け取る人に不利にならないよう、厚生年金の調整率を3分の1に緩やかにすることとされています。
令和8年度の年金額の例|国民年金の満額は月70,608円
厚生労働省が示した令和8年度の年金額の例(月額)は次のとおりです。
| 区分 | 令和7年度 | 令和8年度 | 増えた額 |
|---|---|---|---|
| 国民年金(老齢基礎年金の満額・1人分) | 69,308円 | 70,608円 | +1,300円 |
| 厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額) | 232,784円 | 237,279円 | +4,495円 |
厚生年金の例は、男性の平均的な収入(平均標準報酬45.5万円)で40年間働いた場合の水準です。また、昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は月70,408円です。年金を受け取りながら働く場合のルールは在職老齢年金の記事で解説しています。
これまでに何回発動した?令和8年度で計7回
マクロ経済スライドは、平成27年度、令和元年度、令和2年度、令和5年度、令和6年度、令和7年度、令和8年度の計7回発動しています。調整は賃金と物価の変動がプラスの年に行われる仕組みのため、毎年必ず発動するわけではありません。また、日本年金機構によると、令和7年度の改定で繰り越された未調整分はないため、令和8年度は国民年金−0.2%・厚生年金−0.1%の調整のみが行われました。
年金額は物価や賃金に連動して増えますが、マクロ経済スライドが発動した年は、その伸びが物価の伸びより小さくなることがあります。令和8年度も、物価変動率3.2%に対して国民年金の改定率は1.9%でした。受け取り始める年齢を遅らせて年金額を増やす方法は年金の繰下げ受給の記事、早める場合の減額は繰上げ受給の記事が参考になります。
よくある疑問
Q. マクロ経済スライドで年金額が前年より減ることはありますか?
A. スライド調整によって、前年度より年金の名目額が下がることはありません。日本年金機構の説明では、マクロ経済スライドは「前年度よりも年金の名目額を下げない」という措置を維持したうえで行われ、年金額の改定に反映しきれなかった調整率は、翌年度以降に繰り越されます(キャリーオーバー制度、平成30年4月1日施行)。令和8年度は改定率がプラス(国民年金1.9%、厚生年金2.0%)で、年金額は前年度から増えています。
Q. 令和8年度の改定はいつの年金から反映されますか?
A. 令和8年4月分からの年金額に反映されます。実際に受け取る時期や金額は、日本年金機構から届く年金額改定通知書などで確認できます。
Q. 国民年金保険料も変わりましたか?
A. 令和8年度の国民年金保険料は月17,920円です。前納や早割の割引額は国民年金保険料の記事で確認できます。
まとめ:令和8年度は国民年金1.9%・厚生年金2.0%の引上げ
マクロ経済スライドは、加入者数の変動と平均余命の伸びをもとにしたスライド調整率を、賃金と物価がプラスのときに改定率から差し引く仕組みです。令和8年度は名目手取り賃金変動率2.1%から、国民年金で0.2%、厚生年金で0.1%を差し引き、それぞれ1.9%・2.0%の引上げになりました。国民年金の満額は月70,608円で、発動は計7回目です。自分の年金額は、毎年届くねんきん定期便などで確認しましょう。
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。数値は厚生労働省・日本年金機構の公表資料(2026年11月5日時点)に基づいています。