「金利が上がると債券の価格が下がる」とよく言われますが、なぜそうなるのか、どのくらい下がるのかは意外と説明しにくいものです。日本の長期金利が3%前後まで上がった今、国債や社債、債券の投資信託を持つ人にとって知っておきたい基本です。
結論:すでに発行された債券の利率は変わらないため、市場の金利が上がると、より高い利率の新しい債券と比べて魅力が下がり、価格が下がります。金利が下がると逆に価格は上がります。仮に利率2%・額面100円の債券で市場の金利が3%に上がると、残り期間1年なら約99.03円、5年なら約95.42円、10年なら約91.47円になり、残り期間が長いほど値下がりは大きくなります。ただし、発行体が破綻しなければ、満期まで持てば額面の100円が戻ります。
この記事では、日本証券業協会の解説と財務省の国債金利のデータをもとに、債券価格と金利の関係を計算例で解説します。計算例は説明用の仮の数字です。
債券価格と金利はシーソーの関係
日本証券業協会は、債券価格と金利は逆の動きをする「シーソーの関係」にあり、金利が上がると債券価格は下がり、金利が下がると債券価格は上がると説明しています。
金利2%の債券で考える
日本証券業協会の例では、金利2%の債券を100円分買うと、1年間で2円を受け取れます。
- 金利が3%に上がった場合:新しく100円分買えば1年間で3円受け取れる債券があるので、2円しか受け取れない2%の債券は魅力が減り、価格が下がります。
- 金利が1%に下がった場合:新しい債券は1円しか受け取れないので、2円受け取れる2%の債券の方が魅力があり、価格が上がります。
すでに発行された債券の利率(毎年受け取る利息の割合)は、原則として満期まで変わりません。変わるのは市場で取引される価格です。価格が下がった債券を買うと、満期に受け取る額面との差(償還差益)が生まれ、新しい債券と同じくらいの利回りになるところまで価格が調整されます。

利率と利回りの違い
日本証券業協会によると、債券投資の収益は、毎年受け取る「利息」と、買ったときと手放したときの差額(満期まで持てば「償還差益」、途中で売れば「売却益」)の2つです。
| 用語 | 意味 | 価格が動くと |
|---|---|---|
| 利率 | 額面に対する毎年の利息の割合 | 変わらない |
| 利回り | 利息と差額を合わせた収益全体の割合 | 価格が下がると上がる |
ニュースで「長期金利が上がった」というときは、10年物国債の利回りが上がったこと、つまり10年物国債の価格が下がったことを指します。
計算例:残り期間が長いほど値動きは大きい
利率2%(年1回の利払い)、額面100円の債券を例に、市場の金利(利回り)が3%に上がった場合と1%に下がった場合の価格を計算します。将来受け取る利息と額面を、その時点の利回りで割り引いて合計する方法で、手数料や税金は考慮していません。
| 残り期間 | 利回り3%に上昇 | 利回り1%に低下 |
|---|---|---|
| 1年 | 約99.03円 | 約100.99円 |
| 5年 | 約95.42円 | 約104.85円 |
| 10年 | 約91.47円 | 約109.47円 |
利回りが同じ1ポイント上がっても、残り1年の債券は約0.97円の値下がりで済むのに対し、残り10年の債券は約8.53円下がります。満期までが長いほど、低い利率の利息を受け取る期間が長くなるため、金利の変化の影響が大きくなります。

計算式
残り期間5年で利回り3%の場合は、毎年の利息2円を1.03の1乗〜5乗で割り、5年後の額面100円を1.03の5乗で割って合計します。
2÷1.03+2÷1.032+2÷1.033+2÷1.034+(2+100)÷1.035=約95.42円
実際の取引では、利払いの回数、経過利子、手数料などで価格は変わります。目安として理解してください。
10月の日本の国債利回りはどう動いた?
財務省の国債金利情報によると、10年物国債の利回りは10月1日の3.092%から10月29日には2.876%へ、0.216ポイント低下しました。シーソーの関係から見れば、この間、10年物国債の価格は上がったことになります。
| 残存期間 | 2026年10月1日 | 2026年10月29日 |
|---|---|---|
| 2年 | 1.939% | 1.901% |
| 5年 | 2.407% | 2.285% |
| 10年 | 3.092% | 2.876% |
| 30年 | 4.122% | 3.956% |
長期金利が1年前からどれだけ上がったかは日本の長期金利の記事で解説しています。金利は日本銀行の金融政策の影響も受けます。10月の会合の結果は日銀10月会合の記事をご覧ください。
債券を持つときの3つのリスク
日本証券業協会は、個人向け社債の主なリスクとして次の3つを挙げています。
- 価格変動リスク:景気動向、金融政策、為替・海外金利などで市場価格は日々変動します。一般的に、金利が上昇すると市場価格が下がります。満期まで持てば原則として元金が戻りますが、途中で換金する場合は時価での売却になり、値下がりで損をすることがあります。
- 信用リスク:発行する会社などが倒産した場合、元本や利息が支払われないことがあります。
- 流動性リスク:途中で換金できますが、市場環境が悪化した場合などには、売りにくかったり、かなり安い価格でしか売れなかったりすることがあります。
個人向け国債は価格が変動しない
財務省によると、個人向け国債の償還金額は額面金額100円につき100円で、中途換金時も同じです。発行後1年経過すればいつでも中途換金でき、その際は直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれます。市場の金利が上がっても、換金額が時価で決まる市場の債券のように値下がりすることはありません。金利の種類や中途換金のルールは個人向け国債の記事で解説しています。
債券の投資信託も金利の影響を受ける
債券に投資する投資信託の基準価額も、組み入れている債券の価格の影響を受けます。投資信託には満期で額面が戻る仕組みがないため、金利が上がる局面では基準価額が下がることがあります。
よくある疑問
Q. 金利が上がりそうなら債券は買わない方がいい?
A. 金利の先行きは誰にも確実にはわかりません。満期まで持つつもりで買う場合は、途中の価格の上下にかかわらず、発行体が破綻しなければ利息と額面を受け取れます。途中で売る可能性があるかどうかで、価格変動の影響の受け方が変わります。
Q. 債券価格が上がると利回りはどうなる?
A. 下がります。受け取る利息と額面は決まっているので、高い価格で買うほど、収益全体の割合(利回り)は低くなります。
Q. 株価と債券価格の関係は?
A. 決まった関係はありません。金利の上昇は企業の借入コストや株式の評価にも影響しますが、景気や企業の業績など、ほかの要因でも株価は動きます。米国の金利の動きはFOMC10月会合の記事も参考にしてください。
まとめ:金利が上がると債券価格は下がる
- 債券価格と金利はシーソーの関係で、金利が上がると価格が下がり、金利が下がると価格が上がります。
- 仮の例(利率2%・額面100円)では、利回りが3%に上がると、残り1年で約99.03円、10年で約91.47円になります。残り期間が長いほど値動きは大きくなります。
- 10年物国債の利回りは10月1日の3.092%から10月29日の2.876%へ低下しました。
- 満期まで持てば原則として額面が戻りますが、途中で売ると値下がりで損をすることがあります。信用リスクや流動性リスクもあります。
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。計算例は説明用の仮の数字です。債券や債券の投資信託は価格が変動し、元本を割り込むことがあります。