台湾の半導体受託製造(ファウンドリー)大手TSMCは、2026年10月15日に7〜9月期(第3四半期)の決算を発表しました。売上高は1兆4,942億台湾ドルで前年同期比50.9%増、純利益は7,630億台湾ドルで68.7%増でした。
結論:7〜9月期は、売上高・利益ともに大きく伸び、米ドル建ての売上高は会社が7月に示した見通しの上限を上回りました。10〜12月期の売上高は523億〜543億ドルと、7〜9月期よりさらに増える見通しです。一方で、売上総利益率は前の四半期より下がっており、利益率の動きも合わせて確認したい決算です。
この記事では、TSMCの公式発表と米証券取引委員会(SEC)に提出された資料をもとに、決算の数字、見通しとの比較、日本の投資家が見ておきたいポイントを初心者向けに整理します。
TSMCの7〜9月期決算は?売上高50.9%増・純利益68.7%増
まずは主な数字です。TSMCは台湾の会計基準(TIFRS)にもとづく連結の数字を、台湾ドルで発表しています。
| 項目 | 2026年7〜9月期 | 前年同期比 | 前四半期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆4,942億台湾ドル | 50.9%増 | 17.6%増 |
| 営業利益 | 8,764億台湾ドル | 75.0%増 | 14.3%増 |
| 純利益 | 7,630億台湾ドル | 68.7%増 | 8.0%増 |
| 1株当たり利益(希薄化後) | 29.43台湾ドル | 68.7%増 | 8.0%増 |
前年の7〜9月期は、売上高が9,899億台湾ドル、純利益が4,523億台湾ドルでした。1年でどちらも大きく増えています。なお、米国の預託証券(ADR)1単位当たりの利益は4.60ドルです。
この四半期の数字は、発表時点では取締役会の承認前とされています。数字の確定や詳しい内訳は、今後の開示でも確認できます。

米ドル建て売上高467.2億ドル|7月の見通し446億〜458億ドルを上回る
TSMCは、売上高の見通しを米ドル建てで示しています。そのため、見通しとの比較は米ドル建ての数字で見ます。
| 項目 | 7月に示した見通し | 7〜9月期の実績 |
|---|---|---|
| 売上高(米ドル建て) | 446億〜458億ドル | 467.2億ドル |
| 売上総利益率 | 65〜67% | 66.4% |
| 営業利益率 | 56〜58% | 58.7% |
米ドル建ての売上高は前年同期比41.2%増、前四半期比16.2%増でした。見通しの上限だった458億ドルを約2.0%上回っています。営業利益率も見通しの上限を上回りました。売上総利益率は見通しの範囲内です。
月次の売上高から試算した7〜9月の合計は、TSMCの9月売上高の記事で紹介しています。今回の正式な決算でも、台湾ドル建ての売上高は1兆4,942億台湾ドルでした。
利益率はどうだった?売上総利益率66.4%、前四半期より1.3ポイント低下
利益率は、売上高のうちどれだけが利益として残ったかを示す割合です。7〜9月期と4〜6月期を比べると次のとおりです。
| 利益率 | 4〜6月期 | 7〜9月期 |
|---|---|---|
| 売上総利益率 | 67.7% | 66.4% |
| 営業利益率 | 60.3% | 58.7% |
| 純利益率 | 55.6% | 51.1% |
売上総利益率は1.3ポイント下がりました。それでも、売上高のおよそ3分の2が売上総利益として残る高い水準です。純利益の伸び(前四半期比8.0%増)が売上高の伸び(17.6%増)より小さいのは、利益率が下がったためです。
会社の発表文では、利益率が下がった理由は説明されていません。理由を断定せず、次の四半期の見通しと合わせて確認するのが無難です。
どの技術が売れている?2nmが8%、7nm以下の先端品が79%
TSMCは、回路の細かさ(プロセス技術)ごとのウエハー売上の割合を公表しています。数字が小さいほど、より新しく高性能な技術です。
| 技術 | 4〜6月期 | 7〜9月期 |
|---|---|---|
| 2ナノメートル | 3% | 8% |
| 3ナノメートル | 30% | 33% |
| 5ナノメートル | 33% | 28% |
| 7ナノメートル | 11% | 10% |
| 7ナノメートル以下の合計(先端技術) | 77% | 79% |
最新の2ナノメートルの割合が3%から8%に増えました。3ナノメートルと5ナノメートルを合わせると61%で、売上の中心は引き続き先端技術です。最高財務責任者(CFO)は、10〜12月期も2ナノメートルの急速な立ち上がりを含む先端技術への強い需要が業績を支えるとの見方を示しました。
AI向けの半導体需要は、ほかの半導体企業の決算にも表れています。韓国の例はサムスン電子の7〜9月期の記事で取り上げました。
10〜12月期の見通しは?売上高523億〜543億ドル、営業利益率56.5〜58.5%
TSMCは、10〜12月期(第4四半期)の見通しを次のように示しました。利益率の見通しは、1ドル=31.8台湾ドルの為替レートを前提にしています。
| 項目 | 7〜9月期の実績 | 10〜12月期の見通し |
|---|---|---|
| 売上高(米ドル建て) | 467.2億ドル | 523億〜543億ドル |
| 売上総利益率 | 66.4% | 65〜67% |
| 営業利益率 | 58.7% | 56.5〜58.5% |
売上高の見通しは、7〜9月期の実績と比べて下限で約11.9%、上限で約16.2%多い水準です。一方、営業利益率の見通しの上限は58.5%で、7〜9月期の58.7%をわずかに下回ります。売上は増えても、利益率は横ばいから低下の範囲を想定していることになります。

日本の投資家が確認したいポイントと注意点
TSMCは、多くの半導体企業やAI関連企業と取引がある会社です。そのため、TSMCの決算は、AI向けの半導体需要がどの程度続いているかを知る手がかりとして注目されます。
- 売上の伸びと利益率を分けて見る:売上高が増えても、利益率が下がれば利益の伸びは小さくなります
- 見通しは会社の予想:10〜12月期の数字は約束された結果ではなく、需要や為替で変わる可能性があります
- 為替の前提に注意:利益率の見通しは1ドル=31.8台湾ドルが前提で、7月の見通し(32台湾ドル)とは前提が異なります
- 個別株の値動きは決算だけで決まらない:関連する日本の半導体株は、各社の業績や市場全体の動きにも左右されます
決算の日に株価が大きく動いたときの確認方法は株価が急騰・急落した日のチェック項目の記事で、AI投資のリスクの考え方はNVIDIAのAI投資とリスクの記事で解説しています。
NISAで投資信託を積み立てている人も、短期の決算の結果だけで売買を判断せず、長期の方針に沿って考えることが大切です。
まとめ:TSMCの7〜9月期は増収増益、見通しも増収だが利益率に注目
- 7〜9月期の売上高は1兆4,942億台湾ドル(前年同期比50.9%増)、純利益は7,630億台湾ドル(68.7%増)でした
- 米ドル建ての売上高467.2億ドルは、7月の見通しの上限458億ドルを上回りました
- 売上総利益率は66.4%で、前四半期より1.3ポイント下がりました
- 2ナノメートルの割合は8%に増え、7ナノメートル以下の先端技術は79%でした
- 10〜12月期の売上高は523億〜543億ドル、営業利益率は56.5〜58.5%の見通しです
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資の判断は、最新の開示資料を確認したうえでご自身で行ってください。